ブルガリア物語 ③~You are my type?~
吉岡です。
ミーティングは10時から始まりました。僕は鋳造グループに戻っています。ロシア語の通訳がついているので相変わらず暇です。暇を見越して、今日は契約書と技術仕様書を持って来ています。内職します。早く、他のみんなに追い付かなければ・・
昼休みになりました。奥田君が近寄って来ました。「ミーティングはどう?」「問題ありません」「通訳のユリアから聞いたのですが」と前置きして、奥田君は続けました。
「吉岡さんはvery diplomaticだと、みんな、言ってるらしいですよ」diplomatic? 残念ながら知らない単語です。まてまて、diplomatが外交官だから、その形容詞。でも、やはり、分からない。
diplomaticとは、どういう意味かと奥田君に訊ねると、辞書によると、駆け引きのうまいとか、如才ないとかいう意味だと言います。
昨日のやかんの話が効いたのでしょうか。技術屋として喜ぶべきか、否か、思案のしどころです。
奥田君は、さらに、通訳のマリーナが、ここには "two handsome boys" がいると言っていたと憤慨しています。「誰のこと?」と、訊くと、「吉岡さんと私のことですよ」と言います。「お互い、この年齢(とし)でboysはないだろう」、と言うと、「私はともかく、吉岡さんはもう、30も半ばなんだから、boyはおかしい」と言います。まあ、僕もメキシコでは10歳以上若く見られたこともありますが。とかく日本人は若く見られるようです。
その日のミーティングも終りに近づいた時でした。「You are my type」打合せが次々に終わり静かになったミーティング・ルームに岩原次長の声が響き渡りました。鍛造(1000℃以上の高温に加熱された鋼塊をプレスでたたき、鍛(きた)えて形を整える工程)グループのテーブルです。
マリーナが頬を赤らめてうつむいています。ユリアが肩をすくめ、眉根を寄せて唇を歪めました。せっかくの美形が台無しです。マリーナは、年のころなら35、6。中肉・中背、ブルネットのべっぴんさんです。
どういう経緯で 出た言葉かは知りませんが、ミーティングの最中に、「You are my type」は、不謹慎。あり得ない。「これはいかんやろ」と呟いていました。
そんなことを思い出しながらきょうの気分は「手羽の味噌漬け焼き」と「ビール」で。
<ブルガリア語 ワンポイント>
Добър вечер(ドブリヴェッチェル)こんばんは